2015年8月13日木曜日

温泉 :治療と病のみんぞく学


近くの甲子温泉に行ってきました。若い頃は温泉が好きで、はしごまでして追いかけてたのに、今はなんだか面倒臭く、今夏ははじめて。暑さのせいもあったのでしょうね。


このところ民間薬を追っていましたが温泉もれっきとした治療の1つ。おもしろいのはサギの湯とかシカの湯というのが、動物が 利用しているのを見て、その効用を学んだという温泉がけっこう多いことです。傷、やけど、リューマチ、胃病にきく。動物と人を結ぶ一線がここに見られるの かもしれません。

しかし、プラセボ的というか、日常空間から解放されるという精神的なものが基本的に多いのではないでしょうか。科学か経験か?病と治療の関係は複雑ですね。そういえばドイツも温泉治療がけっこう盛んです。



温泉についてわたしはいつも不思議に思っていることがあります。宣伝用のポスターやビデオに女の人がいつもからだにタオルを巻いている。あれは現地では禁 止されているはず。後世の学者が、そんな資料をつかって、これが正しい温泉の入りかたなどという論文を書かないかと心配です。

(小山 修三)

2015年8月11日火曜日

オトギリソウ:薬のミンゾク学 その2


弟切草をおいかけています。

この薬草には怖い説話がついている。秘薬の作り方を他人に漏らしてはいけないと言っていたのに、弟が漏らしたので、切り殺したというものである。漢字から の連想だろうが、それだけ効果のあることを示しているのかもしれない。ところが今は虫さされに塗る、にまでにおちぶれ?ている。

雑貨屋でも散髪屋でも郷土館でも話を持ちかけると必ず使っているという答えが返ってくる。主におばさんに聞くのだが若い子の反応もいい。それぞれの家で土 用の頃採って干し、焼酎漬けにするのが一般的である。しかし昔は、焼酎はそう簡単には手に入らなかったはずで、新しい作り方であろう。すり潰したり、噛ん だり、他の草と混ぜるなどもっと神秘的な方が、効果がありそうだ。

弟切草の利用は(今のところ)福島だけのことで、四国では聞いたことがないし、青森や関東もそうではないという気がする。そういった地域性の差をどう捉え るかも重要だろう。プラセボ効果も含め、病治療の知恵は、迷信ではなく貴重な文化遺産であるという視点から、今、民族学者は世界中で調査をはじめている。

(小山 修三)

2015年8月8日土曜日

オトギリソウ :薬のミンゾク学



郡山美術館に行った時、前日のくすりの研究会で興奮していたのだろうか、伝統薬の展覧会を開けばどうだろう、絵馬とか広告とか、霊験あらたかな寺社の資 料。それに民間薬をあつめるといい、大きく構えなくてもギャラリー・スペースをつかって参加型のイベントにするといい、などと一人でしゃべっていた(いつ もそうじゃないですかという人もいるけど)。

学芸員のTさんが民間薬と言えばこの地方はオトギリソウですねと語り始め。その熱弁はクマノイとかチョウセン ニンジンに万能薬に似た信頼を寄せる地方があることを思い出させた。




オトギリソウは日本、朝鮮、中国に自生する草、漢方薬名は小連翹。鎮痛、月経不順、止血、関節炎にも効くとある。現在、白河市に近い山中の村に逼塞してい るところなので、ちょうどいいやと近所の散髪屋さんに出かけて行った。ありました。庭の雑草に混じって小さな黄色い花をいっぱいつけた草、土用の頃に採 り、乾かして焼酎につける。虫さされに効くと。

このあたりはどこの家でもやってたもんだ、今は薬局に行ってしまうんだけど、と奥から埃をかぶったボトルを持ち出してきた。少し頂いて、前日そとでひるねをしてたら虫に刺されたところにつけたら、なおった?。それ以外の薬効についての情報は得られなかったのでもっと調べなければと思っている。

(小山 修三)

2015年8月6日木曜日

7月28日の講義(その2)


煙でいぶすアボリジニの治療、ドイツの薬屋が日本の薬種問屋、アメリカ西部劇のバッファロー・ビルの巡回ショウの真の目的は薬を売ることだった、その薬に は先住民の薬草が使われていたのではないか、アメリカでは現在、東洋医学の再評価がはじまっている…など民族学者の話はウソのような(ホントウの)本当に 見た体験談が入るのでみんな楽しそうだった。

しかし、最も盛り上がったのは日本の民俗学についてだった。柳田國男から始まる日本民俗学はたくさんの治療や薬の話を採集してきた。分類すると、1)祈 願:お百度参り、物断ち、願掛けなど 2)祈祷:村祈祷、神送りなど 3)まじない:神主・僧侶・巫女・修験など 3)物理療法:按摩、鍼灸、温泉(入 浴)など 4)民間薬、富山に代表される売薬、そして民間薬には、モグラの丸焼きとか、なんとも不思議なものがある。今は医療制度がいきわたったためにこ ういった習慣は消えつつあるが、地方では青森や飛騨などの朝市でまだたくさん野草を売っているし、寺社めぐりの団体旅行、ガンに効くお寺にまいるなどまだ まだ私たちの生活の中にのこっている。

こういった実態を新しい視点でしらべることが、庶民のつくった文化遺産を守るために必要ではないか。異分野が協力する研究はおもしろい。
これが、プラセボ効果に注目して、あたらしい展開を目指す若い研究者への言葉である。この講演で学ぶことが、改めて一論をまとめたいとおもっている。 

津谷喜一郎編著 2015『いろいろな分野のエビデンスー温泉から国際援助までの多岐にわたるRCTやシステマティック・レビュー』ライフサイエンス出版

(小山 修三)

2015年8月4日火曜日

くすりの民族学 @東大薬学部


7月28日に、東大薬学部津谷先生の研究会に呼ばれて話をしてきました。タイトルは「くすりの民族学」

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日本の現代医学はいわゆる西洋医学の圧倒的な影響下にあるが、その根源は呪術、よくても宗教、哲学に帰着する。それは、アユルベーダ(インド)、東洋医学 (中国)などにも共通していることだ。それは医学が「死」というものを明快に説明できないからである。ここでは病を、1.死に至るものと、2.そうではな く、痛みや痒み発熱などの日常的な愁訴を柔げるためのものにわけて、それに使用された薬についてかんがえることにする。

故西田利貞氏はアフリカでチンパンジーが普段は食べない苦い葉っぱを食べて病気を治しているのに注目して「動物薬学―zoopharmacology)を 提唱した。動物にも薬の知恵があるのではないかというわけだ。そこで辺りを見回すと、体調悪げな犬や猫が特別な草を食べているのを見ることがある。もっと 人間に近づけてみると、かつて(その頃は人類として認められていなかった)ネアンデルタール人が死者を弔って花を捧げたという説が出されたが、最近ではそ のなかに薬草が混じっていたという研究も出ている。無文字社会のアボリジニやアメリカ先住民の社会でも、調べてみるとしっかりした体系をもっていることが わかってきた。
日本でも、縄文時代にはキハダやニワトコなどが集中的に出土しており、弥生時代には漢方系の桃仁(桃の種)やベニバナが発見されている。日本は律令制が敷 かれ、『神農本草經』を基礎にした医学体系がうちたてられる、それが現代につながっているのである。そうすると、動物から人間までを結ぶ一本の糸が見えて くるのではないか。
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これが講演の柱だったが、素人が専門家に話すのは「釈迦に説法」みたいなので、座談形式でやったため話題は多岐にわたった。津谷さんは、かつてWHOで活 躍していたので、世界的な視野で医療を考えるので、実行よりは精神的な効果プラセボ(日本語では偽薬、中国語では安楽薬と訳されている)に注目し、麻薬、 温泉、介護などにテーマをひろげている。参加者は弟子筋の若い研究者たちで、熱気のある刺激的な討論会でした。薬や病のテーマは関心が高く、友の会のセミ ナーをやるとおもしろいなーと思いました。

(小山 修三)

暑い関西を脱出して、執筆にいそしむ?リジチョー。
「持ってきたパソコンとは相性がわるいし、電波の調子もよくないしで、なかなか原稿がすすまない」と言いながら送られてきた写真です。(ほんとかなあ。 こぼら)

2015年8月1日土曜日

アユとオオカミ


すでに書きましたが、鷲家口にあるニホンオオカミ終焉の地にいって天然アユをだすお店に当たりました。そのときは塩焼きで一杯やって帰ったのですが、後で考えるとあれだけ生きがいいのだから「セゴシ」を食えばよかったと、も一回行きました。

奈良の奥山はアユの名所、ここ数年、十津川など方々いったのですが大雨による「山抜け」が方々で発生して川があれ、天然アユはもうだめかとあきらめかけて いたのですが・・・。天然アユはお高いのですが、はらわたが苦くておいしい、これも「雰囲気を食べる」のだからしかたないと満足でした。






オオカミについては、人々に記憶がないかといろいろ聞いたのですが、何しろ100年以上前のこと、具体的な手がかりは見つけられませんでした。庭に飼い犬 がいて、額から鼻にかけて(段のない)スッとしているので、これは「オオカミのDNAが残っているのかなー」ときいたら、飼い主は「ありません」とニベも ない返事でした。

(小山 修三)