2016年11月9日水曜日

見ないで楽しむ美術館:兵庫県立美術館の試み

アイマスクで目隠しされて会場に入る。一本の細いロープに導かれてそろそろと歩いて作品に至る。録音機のボタンを押すと解説がながれ、指示に従ってさわっていく。上から、丸い突起はあたまです、ギザギザしてるのは髪ですね。もう1つ左にあるのはなんでしょう、赤ちゃんかな。それから下へ、ツルツルした広い面は背中と胸、前の2つの突起が乳房です。どっしりした下半身、全体がざらざらしてるのは衣装を着けているからでしょう。その間7分。全体として3つの作品があるから、全体として約30分、終わるとどっと疲れを感じるほどだ。普通の目で見る印象とくらべると、重なる部分とそうでない部分に分かれるが、後者はふつうの人が感じなかったことである。
兵庫県立美術館で開催されていた特別展「つなぐ、つつむ、つかむ 無視覚流鑑賞の極意」の最終日は11月6日(日)だった。広瀬さんがぜひ来てよ、といったのはこの企画にしっかりした手ごたえを感じたからだろう。準備は大変だったことはわかるけど館員も大喜びだった。大勢の方に来ていただけました、今日も予約がいっぱいなんです。
広瀬さんは問題点として「時間がかかりすぎるので大入りは期待できない、大人数の団体も無理」なところが問題だという。
また、展示物宝物主義の従来の美術館ではさわることは厳禁である。確かに頭、背胸には摩滅の跡がありてかてかしている。でもほとんどの作品はさわるなという意識はなかったはずだ。露天に置かれた雨ざらしのものも多いし。それにブロンズ像なら鋳直しも可能だろう。そして最近の3D技術の発達により、精巧な複製もつくることができる。美術鑑賞とは何かを改めて考えてしまった、そしてこの企画は新しい鑑賞法を示していると思った。


兵庫県立博物館「収蔵品による小企画展:美術の中のかたち-手で見る造形