2015年8月4日火曜日

くすりの民族学 @東大薬学部


7月28日に、東大薬学部津谷先生の研究会に呼ばれて話をしてきました。タイトルは「くすりの民族学」

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日本の現代医学はいわゆる西洋医学の圧倒的な影響下にあるが、その根源は呪術、よくても宗教、哲学に帰着する。それは、アユルベーダ(インド)、東洋医学 (中国)などにも共通していることだ。それは医学が「死」というものを明快に説明できないからである。ここでは病を、1.死に至るものと、2.そうではな く、痛みや痒み発熱などの日常的な愁訴を柔げるためのものにわけて、それに使用された薬についてかんがえることにする。

故西田利貞氏はアフリカでチンパンジーが普段は食べない苦い葉っぱを食べて病気を治しているのに注目して「動物薬学―zoopharmacology)を 提唱した。動物にも薬の知恵があるのではないかというわけだ。そこで辺りを見回すと、体調悪げな犬や猫が特別な草を食べているのを見ることがある。もっと 人間に近づけてみると、かつて(その頃は人類として認められていなかった)ネアンデルタール人が死者を弔って花を捧げたという説が出されたが、最近ではそ のなかに薬草が混じっていたという研究も出ている。無文字社会のアボリジニやアメリカ先住民の社会でも、調べてみるとしっかりした体系をもっていることが わかってきた。
日本でも、縄文時代にはキハダやニワトコなどが集中的に出土しており、弥生時代には漢方系の桃仁(桃の種)やベニバナが発見されている。日本は律令制が敷 かれ、『神農本草經』を基礎にした医学体系がうちたてられる、それが現代につながっているのである。そうすると、動物から人間までを結ぶ一本の糸が見えて くるのではないか。
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これが講演の柱だったが、素人が専門家に話すのは「釈迦に説法」みたいなので、座談形式でやったため話題は多岐にわたった。津谷さんは、かつてWHOで活 躍していたので、世界的な視野で医療を考えるので、実行よりは精神的な効果プラセボ(日本語では偽薬、中国語では安楽薬と訳されている)に注目し、麻薬、 温泉、介護などにテーマをひろげている。参加者は弟子筋の若い研究者たちで、熱気のある刺激的な討論会でした。薬や病のテーマは関心が高く、友の会のセミ ナーをやるとおもしろいなーと思いました。

(小山 修三)

暑い関西を脱出して、執筆にいそしむ?リジチョー。
「持ってきたパソコンとは相性がわるいし、電波の調子もよくないしで、なかなか原稿がすすまない」と言いながら送られてきた写真です。(ほんとかなあ。 こぼら)

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