2016年3月19日土曜日

野鳥から見た里山:150年前の山口県


五島淑子さん(山口大)から研究報告の抜き刷りが届いた。彼女の専門は食物学で、ここ数年は天保12年(1842)に編纂された『防長風土注進案』に書か れた食品を同定し、それをリスト化してデーターベースにするという肩のこる作業をおこなっている。今回は1)農作物・採集品 2)魚類、3)薬品につぐ 4)鳥獣獣類である。将来はこれらの産物がどこで取れたかをインターネットで一般公開し地図に表示できることをめざしているそうだ。
ここでは鳥類に注目して私の感想を述べてみたい。

鳥類は91種(なかにニワトリ、チャボ、アヒルの家禽がふくまれている)で、現在観察されている330種(山口県立山口博物館1987『山口県の野鳥ガイ ド』)とくらべると少ないのは当時の人々と現在の認識法(科学的でこまかい)との差によるものである。記載のうち、キジ、マガモ、ヤマドリ、スズメ、ハト など食されたと考えられるものが多いのは当然である。しかし、鳥類は好みの環境があり、浜辺ではカモメやチドリ、上空をトビ、ハヤブサ、ノスリ。町にはカ ラス、スズメ、ツバメ、周辺の野原や林にはキジ、モズ、ウグイス。水辺にカワセミ、サギ。森にフクロウ、キツツキ。ほかにメジロ、シジュウカラ、サンコウ チョウなど小鳥が意外に細かく分類されているのにも日本人の感性がうかがわれる。


鳥類は環境変化に敏感で急激に数を減らしたり、絶滅にいたることもある。150年以上前の記録でもコウノトリはすでにみえないし、トキは絶滅、ナベヅルは 県鳥として保護された熊毛郡八代にわずかに残るだけである。しかし、その一方で都市的環境に適応して増えすぎるカラスとかハト、(一部では)ウやサギが敵 視されることもある。そういう問題を内包しながら、この時代の人たちは、トリたちと共存していたことを忘れてはならないと思う。私たちの祖先が作ってきた 環境をどうやって守るかが、これからの私たちの仕事だと思う。里山は日本人の心の風景であり、トリはそのシンボルなのだとおもう。

(小山 修三)

五島淑子ほか「『防長風土注進案』の産物記載に見る食品目録(3)」 『山口大学教育学部研究論叢(第1部)』65巻1号
※この論文は、 山口大学学術機関リポジトリより入手可能です。
http://petit.lib.yamaguchi-u.ac.jp/G0000006y2j2/Detail.e?id=2585620160325162309
をご覧ください。

※写真;万博公園のカラス

2016年3月5日土曜日

アレッポの石鹸



ISの台頭で社会混乱が続くシリア。そのホットな場所の一つにアレッポという町があリます。どこかで聞いた名だと思ったら、風呂場でみつけました。緑の混 ざった茶色の石鹸、自然食品屋さんで買ったそうです。家事にうといので気がつきませんでしたが、知る人ぞ知るものらしい。オリーブと ローレル(月桂樹)オイルを原料として、1000年近い歴史をもっています。

シリアは中東ではごく最近まで平穏な地域で、友人の赤沢威さんはネアンデルタール人を、泉さんはローマ時代の都市を永年掘って大きな成果をあげています。 それもいまは夢。今日買いにいったら、お店の大きな木箱が空っぽになっていました。きっと補給が途絶えたのでしょうね。

梅棹さんは早くから21世紀で問題なのはイスラム圏と喝破していました。しかし、私たちにとって遠い国、歴史や現状もよく理解できていない。人類の叡智を信じて、はやく平和な世界が還ればいいのに、と願うばかりです。


(小山修三)