2015年7月25日土曜日

海藻食いの日本人 :トコロテンの捕逸


トコロテンについて書いたら予想外に反応が多かったのでおどろいた。「おやつ的なもの」としてノスタルジーもあって気軽に書いたのだが・・・。し かし、考えてみると日本人ほど海藻を利用する食文化は世界的にもめずらしいのではないだろうか。いま話題になっている和食にしても、そのメダマには 「昆布だし」があり、「スシをまくノリ」がある。ネットで調べるとアイルランドやスコットランドにもあるらしいが、現地のレストランで出あったこ とがない(こんどイシゲ先生にあったら聞いてみよう)。

日本人はいつから海藻を食べ始めたのだろうか?縄文人は環境からみても、何でも食べる(broad spectrum)という姿勢からみても海藻の利用は容易に想像できるのだが、確かな証拠が見つからない。明確になるのは、歴史時代になってから、万葉 集、古事記、日本書紀、風土記、そして木簡にも頻繁にあらわれる。『延喜式』には官の使用人の給食のおかずだったことが書かれている。
海藻はふつう、英語ではseaweed(海の雑草)と一括されるのに対し、日本ではコブ、ワカメ、テングサ、フノリ、ミルなどとじつにこまかく分類されて いる。それは肉とか麦などがひとことでかたずけられているのと比べると対照的である。調理法をみても、だし、煮付け、汁物、盛り合わせのツマ、寒天やトコ ロテンなど地方色豊かに、多様に料理されていることに驚くのである(詳しく書けば一冊の本になりそうだ)。

海藻は栄養学的には、ハラの足しにはならないが(いま、ダイエット食品として注目されているのは皮肉だが)、コメを主食にした日本人の食生活に不足がちなビタミンやミネラルにとんでいて、歴史的にみると絶妙ともいえる役割を果 たしていたと言えるそうだ。

(小山 修三)
坪井清足監修 奈良国立文化財研究所編『よみがえる平城京―天平の生活白書―』日本放送出版協会, 1980より

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