今多くの地方博物館は入場者が少ないので頭を痛めています。博物館はお金がかかるので、廃館に追い込まれたり指定管理者制度に切り替えられるケースもでて
います。どうすれば活性化できるのか、私自身が経験した吹田市立博物館とみんぱくでのユニバーサルミュージアム研究会の活動を中心に考えていることを話し
ました。
原因の一つは市民との対話が欠けていることでしょう。明治初年の文明開化期に大慌てでつくられた日本の国立博物館は、教育を目的とした「上から目線」のも
のでした。この後進国的発想は欧米の博物館が民営で行われているのと対照的です。運営も、お役所的体質になった。それを地方博物館はそれを実直に引き継い
でいるのです。
吹田市では市民委員会ををつくり、関心の高い「千里ニュータウン」、「70年万博」、吹田の自然」などの特別展を行い大変盛り上がりました。音楽会、工作
教室、自然観察会などのイベントが増えたことも観客動員につながりました。教育だけでなく楽しむという要素が加わった事が大きかったと思います。
もう一つは「触る」ことを展示に加えたことです。日本の博物館では、まだ納屋に転がっている民俗資料、土器の破片、それにレプリカでさえも一度博物館資料
となると神聖なものとして、さわることはタブー視されていました。展示品はガラスケースでまもられ写真撮影のほか、触るな、騒ぐな、などの禁止サインだら
けであることがそれを示しています。ある時、視覚障害者の案内をして、これでは不公平だと怒りを覚えました。触ってもらってもいいものもあるはずだ。しか
し、それによる破損や摩滅をどう防ぐかなどの大きな問題が生じます。この点については広瀬浩二郎さんを中心とした「みんなが楽しむ博物館(ユニバーサル
ミュジアム)研究会」で10年近く討論をかさねています。
100年以上の伝統を誇る日本の博物館は保存や展示法が見事なまでに確立しています。しかし、それだからといって全国どこへ行っても同じ顔ではだめでしょう。
地方創生がこれからの日本のあるべき道とされている現在、博物館はその中核となる施設なのです。各地のエネルギーを反映した多様な展開をきたいしたいと思います。
(小山 修三)